01月18日 (金)|理論ゼミ02「脱成長×(ランドスケープ+コミュニティ)」レポート

まちの近くで里山をいかすシゴトづくりシリーズのカセギに流されないシゴトづくり理論ゼミ02「脱成長degrowth×(ランドスケープ+コミュニティ)」を開催しました。
参加者は、一般参加者20名、ゲスト・スタッフを合わせると25名でした。

今回の企画は、2019年春、日本造園学会が発行する学会誌『ランドスケープ研究』で「脱成長」をテーマとした特集を組むことに刺激を受けたものです。
NORA理事長の松村正治は、この特集論文の執筆依頼を受けました。経済学や社会学から脱成長を議論するならばイメージがすぐに湧くのですが、造園学からのアプローチの場合、どのような切り口から「脱成長」を考えると議論が深まるのかよくわかりませんでした。そこで、今回の特集の企画担当者であり、地理学・都市計画を専門とするルプレヒト・クリストフさんを京都から招くとともに、議論を促すためにコメンテーターには環境倫理学者の鬼頭秀一さんをお迎えすることにしました。
そういう点で、今回の企画は個人的には明確な目的を持って開催したものですが、議論をオープンに開いて多角的な視点からチェックしていただけるとありがたいと思って、理論ゼミの形式にしました。

さて、その結果ですが、このときの議論を受けて考えが整理され、論文が書けるような気になったという点で、個人的にはとても良かったです。
気がついたことをいくつか挙げると、

1.ランドスケープという言葉のイメージ、意味の受け取り方が、人によって大きく異なっていたように思います。私が里山について話題提供したことはランドスケープの話でもあったわけですが、都市計画や公園設計というような話を期待されていたとすると、ズレを感じたと思います。しかし、クリストフさんも、広い意味でランドスケープという用語を使用していました。私も地理学からランドスケープにアプローチしているので、デザインする対象としてランドスケープをイメージされている方とは、捉え方に違いがみられました。

2.脱成長の社会モデル考える際に、今までもローカルという視点はありましたが、むしろ、ランドスケープという視点の方が有益だと思われました。脱成長についての思考を、より精度を上げて考えていくならば、具体的な土地のポテンシャルへの理解が欠かせないと感じたからです。

3.生活を支えるための基礎的な経済収入は必要だと思います。それをベーシックインカム制度でカバーすべきと言う場合、パイの拡大が必要となるでしょう。しかし、それが簡単ではないことを前提とするならば、自然から得られる非市場的恵みと、それを生かせる知が必要だろうと思います。ここにも教育が絡んできます。生活するうえで教育費が高いという問題は重要ですが、そこでは星槎大学が離島などでも学べる仕組みをつくっていることは参考になります。

4.コミュニティを考える際に、ランドスケープが重要だということでもありました。米国のコミュニティの作り方などのノウハウでは、直接的に関係をつくることよりも、関係が生まれやすい環境づくり、場づくりの工夫が列挙されています。このことからも、都市vs.地方という乱暴な対立軸からコミュニティづくりを考えるよりも、ランドスケープという変数を用いて考える方が有益だと感じました。

5.内山節さんによれば、村人たちは現金を得るための労働である「カセギ」と、村で生きる上で当然おこなう人間的な「シゴト」とを使い分けていること、そして、「シゴト」とは直接自然と関わることが多く、それをおこなわなければ、自然や村、そして暮らしが壊れてしまうようなものであると言います。ここで、自然=ランドスケープ、村=コミュニティとしてみると、ランドスケープとコミュニティをつくるのが「シゴト」であると言えるでしょう。そして、きちんとした「シゴト」があれば、「カセギ」が十分でなくても、人間として生きていくことに対しては十分なのでないかと考えました。

6.理論的な考察ではテーマや問いが決定的に重要ですが、今回少し議論してみて、脱成長に関して「コミュニティ+ランドスケープ」という観点から考えることは、かなり掘り下げられるテーマだと感じました。今回の話題提供は、序論の入口みたいな話でしたが、関連する議論を踏まえて、考察を深められるはずです。

※今回の出演者
ルプレヒト・クリストフさん(総合地球環境学研究所)
鬼頭秀一さん(星槎大学)
松村正治(よこはま里山研究所/恵泉女学園大学)


参加された方の感想

・「脱成長」は日本ではなかなか定着しない言葉であります。それは「成長中毒病」の程度が深刻であるからなのかもしれません。一方で、「脱成長」といわずとも、イイナと思える暮らしをしている人はたくさんいます(とくに地方に)。このあたりのギャップをどう考えるのかは、今後の自分の課題にしたいと思います。
・ランドスケープと脱成長の関係について考えたかったのですが、脱成長に重心がかなり傾いていたので、テーマが期待と違うところにあったようです。
・登壇者お二人のお話は、お聞きする内容全てが私にはほぼ初めての内容なのに、腹落ち度が高かったです。今後、自分ごとにするにはどうしたらよいのか、深い問いをいただいたような気がしています。
・今回のテーマに興味のある様々な職業や年齢の方が参加されており、また自由に参加者も発言できるような雰囲気でディスカッションぎ行われたのが良かったと思います。
・3人の先生方がそれぞれ異なった切り口からお話しくださり、多角的に捉えることが出来て良かったです。
・フリートークや参加者同士が話し合う時間ももっと欲しかった。全体的に時間が足りなかった。
・沢山ディスカッションでき、新たな物の見方を学ぶことができたのでとても良かったです。
・体系的なインプットができ、考えを深めていくときにとても役立てることができそうです。

まちの近くで里山シゴトづくり | 記事